やりたいことは

この頃、母の電話の受け応えが、私の弟から掛かってくる分に対してだけ、微妙な感じになってきてる。

私の息子によると、どう答えようか一日中ずっと練習してるらしい。

大変だね〜〜、ほんと。

 

それだけでも、大変だね〜〜、なんだけど。

 

弟から電話が来るたび。

 

お電話ありがとぉ、お待ちしてましたぁっ。

 

と、植木等の昔の映画にでも出てきそうな、かつてのご令嬢ばりの声音と言葉で毎回やるのだ。

 

くねくねと。

 

ずっとこれをやりたかったんだろうねぇ、と私は息子と話してる。

認知症になって、やっとできるようになったんだねと。

 

息子はばーばがくねくねと練習してる様子がどうにも気になるらしくて、じっと観察している。

 

もともと、母は理知的であることを女子のあるべき姿のベストとしていて、娘の私にもそれを求めていた。

色気や身なりを気にするなんてイヤらしいと私は少女のころ常に言われていたし。

 

それなのにねぇ。

 

実は母自身が、お色気むんむんをしたかったのかと。

やればよかったじゃないねぇ、父に。

喜んだと思うよ。

 

父は死んじゃったし、今もってプライドが高すぎて、外に出るのは苦手だし。

 

いやはや、付き合ってやってる弟もご苦労様だと思う。

 

最近、弟からの私宛のメールには。

 

お疲れです。

 

とまるで業務のような出だしで始まる。